経理担当者に業務が集中し、担当者が不在になると作業が止まってしまう──こうした「経理の属人化」は多くの企業で起きています。
たとえば、経理担当者の属人化が進むとこんな悩みが出てきます。
- 月次作業が遅れ経営者が数字を把握できない
- 情報が担当者だけに集中し引き継ぎが進まない
- 処理方法が担当者ごとに異なりミスが増える
こういった状態を放置すると、判断の遅れや不正の温床につながる可能性があります。
本記事では、属人化の原因から業務棚卸し・マニュアル整備・システム導入までの実務的な解消方法を解説し、外部委託を活用した効率的な体制構築の考え方も紹介します。
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経理業務が属人化する状態とは?原因と企業リスク
経理業務が属人化する状態と特徴
経理業務が属人化する状態とは、請求書処理や仕訳、月次管理などが特定の担当者に依存し、他の従業員では対応できない状況を指します。業務フローや確認ポイントが担当者の経験に基づいて処理されており、ほかの社員に共有もされていないため、業務内容や作業手順が可視化されにくい点が大きな特徴です。
結果として、情報の所在や判断の基準が担当者の頭の中にだけ存在する状態が続き、経理部門全体の透明性が失われます。
属人化が発生しやすい原因(担当者依存・情報共有不足など)
経理業務は専門的な知識や経営情報を扱うため、担当者のスキルや経験に依存しやすい傾向があります。マニュアル整備が遅れ、ワークフローや業務フローが明確になっていない企業では、「担当者のやり方」がそのまま標準となり、属人化を加速させる結果になります。
また、データや資料の管理方法が統一されていない場合、情報共有が滞りやすく、ミスや処理遅延の原因にもつながります。
不正やミスが起きやすくなる構造的な問題
属人化した経理では、担当者以外が業務の中身を把握できず、チェック体制が形骸化しやすくなります。
特に判断基準や作業手順が共有されていない場合、業務の透明性が失われ、ミスや不正が発生しやすい構造が生まれます。
- 処理内容や判断基準を他の従業員が確認できない
- 務の流れが可視化されず、ミスが発見されにくい
- データや書類が担当者独自の管理方法で保管される
このような環境では情報がブラックボックス化し、企業にとって重大な経営リスクとなります。
退職・欠勤による業務停滞のリスク
担当者に業務が集中している状態では、不在が発生した瞬間に経理全体が止まってしまう可能性があります。
特に、作業手順や判断基準が共有されていない場合、退職や欠勤は企業にとって大きなリスクとなります。
- 担当者の急な退職で請求処理や決算作業が止まる
- 引き継ぎが不十分で会計データの整合性が取れなくなる
- 誰も状況を把握できず、経営状況を確認できない期間が発生する
これらは特に中小企業で深刻化しやすく、業務効率や財務の健全性に大きな負荷を与えます。属人化によって生じる問題の本質を理解することで、企業がどこを改善すべきかが見えてきます。
次の項目では、経理の中でも特に属人化が起きやすい業務と、その背景にある構造的な課題を整理します。
経理担当者への依存が続くほど、企業全体のリスクは高まります。
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経理が属人化しやすい業務とその理由
請求書処理・仕訳・月次作業が担当者依存になりやすい理由
経理業務の中でも、請求書処理や仕訳入力、月次作業は担当者個人の判断に依存しやすい領域です。取引先ごとの処理ルールや勘定科目の使い分けが曖昧な企業では、経験のある担当者だけが「正しい処理方法」を把握している状態になりがちです。
このような環境では、業務内容が体系化されず、担当者が不在になると処理が滞る大きな原因となります。
ワークフローや承認プロセスの不備が生む問題
承認フローが整備されていない場合、誰が何を確認すべきかが不透明になり、業務全体の責任範囲が曖昧になります。
- 申請書類に不備があっても気づかない
- 承認の順番が担当者ごとに異なる
- 処理状況を管理する仕組みがなく属人化が進む
このような状態では、業務プロセスの透明性が失われ、企業全体の業務効率が低下する原因になります。
知識やノウハウの蓄積が共有されない環境
経理部門で担当者が長年同じ業務を続けている企業では、個人が持つスキルやノウハウが共有されないまま固定化されてしまう傾向があります。情報の更新が遅れ、データ管理や処理方法が担当者の判断に依存することで、業務フローが属人化しやすい状態が生まれます。
さらに、同じ業務でも担当者によって処理方法が異なるため、会計情報の整合性が取りにくくなる問題も発生します。
業務フローがブラックボックス化する要因
属人化した経理では、業務フロー全体が見えにくくなることで、管理体制が弱まります。
- 作業手順が文書化されていない
- 確認作業の基準が担当者任せになっている
- データの保存場所が統一されず情報が散在する
これらが積み重なることで、業務全体がブラックボックス化し、ミスや不正の温床となりやすい環境が出来上がります。
どの業務が属人化しやすいかを把握することで、改善すべき領域が明確になります。この後は、属人化の解消につながる業務棚卸しとプロセスの可視化について整理します。
業務棚卸しとプロセス可視化による属人化の解消
業務棚卸しで担当者・作業内容を整理する方法
経理業務の属人化を解消する第一歩は、業務の全容を正確に把握することです。請求書処理、仕訳、支払管理、月次作業など、どの作業を誰が担当しているのかをリスト化し、業務の偏りを明らかにします。
担当者の判断で行われている処理がどこにあるか、特定の従業員だけが実施している業務内容は何か、こうした情報を可視化することで、属人化している領域が明確になり、改善の優先順位が判断しやすくなります。
プロセス全体を可視化してリスクを把握する
棚卸しした情報を基に業務フローを図表化すると、どこに依存が生じているかが一目で分かります。
- 申請から承認までの流れが分断している
- 確認作業が担当者ごとに異なる
- 業務プロセスの途中で情報が滞留している
このように、可視化によってリスクの所在が明らかになり、業務改善の方向性を見極めやすくなります。
※ここに図解を挿入(棚卸し→フロー作成→問題点の見える化の流れ/プロセス図)
データ管理・書類管理のルールを統一する
属人化は、データ管理や書類管理が担当者の独自ルールで進められる場合に発生しやすくなります。フォルダ構成やファイル名、資料の保管場所が担当者によって異なると、情報が散在し、ミスが増えます。
これを防ぐためには、保存先のルールや命名規則を標準化し、誰が見ても分かりやすい状態を作ることが重要です。
統一ルールを設けることで、引き継ぎの際の負担も大きく軽減されます。
継続的に更新できる運用体制を整える
棚卸しや可視化を行っても、運用体制が継続的に更新されなければ属人化は再発します。
- 業務内容を定期的に見直すミーティングを設置する
- 改善点を共有し、フローを都度更新する
- 担当者交代に備えて役割分担を明確にする
こうした体制を構築することで、経理業務が特定の従業員に集中する状態を防ぎ、持続的に健全な運用を維持できます。
業務棚卸しとプロセスの可視化で属人化の全体像がつかめると、次に求められるのは実際の作業手順を標準化する仕組みづくりです。
続く項目では、マニュアル作成と仕組み化の方法について整理します。
マニュアル作成と仕組み化で経理の属人化を防止する方法
マニュアル作成の基本工程
属人化を防ぐためには、担当者の頭の中にある業務内容を明文化し、誰でも理解できる形に整えることが必要です。
まずは作業の目的とゴールを明確にし、次に手順や判断基準、注意点を順序立てて記載します。作成時には実際の画面キャプチャや具体例を組み込み、担当者ごとの解釈の相違が生まれないようにすることが重要です。
例外対応やチェックポイントの整理
経理業務には例外的な判断や処理が必要となるケースが多くあります。
- 仕訳処理が標準ルールに当てはまらない
- 請求書の形式が不統一
- 取引先ごとに例外的な処理が必要
こうしたケースをマニュアルに追記しておくことで、担当者による判断のバラつきを防ぎ、情報の一貫性を保ちやすくなります。また、チェックポイントを明確にしておくことでミスの削減にもつながります。
共有と更新がしやすい仕組みの整備
マニュアルは作成しただけでは機能しません。クラウドストレージやナレッジ管理ツールなどを活用し、全員がアクセスできる環境を整えます。共有しやすい仕組みを作ることで、新しい担当者がスムーズに業務を引き継ぐことができるようになります。
さらに、更新が容易な仕組みにしておくことで、業務内容の変化に対応しやすくなります。
担当者が変わっても業務が継続できる体制の構築
属人化を防ぐためには、担当者が交代しても業務が滞らない体制を整えることが不可欠です。
- 作業内容を複数人で共有できるようにする
- ローテーションや教育機会を設ける
- マニュアルを基に複数名が作業を確認できる環境を作る
このような仕組みを整えることで、担当者が急に退職や休職をしたとしても、企業全体として安定した経理運用が可能になります。
マニュアル化によって業務の標準化を進めることで、属人化を大幅に抑えることができます。この流れをさらに強化するためには、デジタルツールやシステムを使った業務の効率化が欠かせません。
次は、属人化を根本から防ぐためのシステム導入と組織体制の整備について解説します。
システム導入と組織体制強化で属人化を根本から防ぐ
クラウド会計・ワークフロー導入で処理を標準化する
クラウド会計やワークフローシステムを活用することで、担当者ごとに異なる処理方法を排除し、業務プロセスを標準化できます。クラウド会計はデータの自動取り込みや仕訳の自動提案に対応しており、担当者の経験に依存しない処理が可能です。
ワークフローシステムを導入すれば、承認ルートが明確になり、申請内容や処理の状態が見える化されるため、属人化しにくい運用が実現します。
デジタル環境の整備でミスと作業負担を軽減
経理システムを統一し、デジタル環境を整えることで、書類の紛失や転記ミスなどのヒューマンエラーを防ぎやすくなります。
- 紙の請求書を電子化して共有性を高める
- 自動仕訳や連携アプリで入力作業を減らす
- ステータス管理機能で処理の抜け漏れを防止する
こうした取り組みによって、担当者の作業負担が軽減され、属人化につながる「個人の判断依存」を抑えることができます。
内部統制とチェック体制の強化
属人化は内部統制の欠如から発生することも多いため、組織としてチェック体制を整えることが重要です。経理担当者と承認者の役割を明確に分けることで、不正や誤処理のリスクを低減できます。
また、月次処理やデータ管理について定期的にレビューを行うことで、担当者依存のプロセスがあれば早期に発見し、改善できます。
役割分担が明確になることで、業務の透明性も向上します。
経営者が把握すべき管理ポイント
属人化を解消するには、経営者が経理の状態を把握できる仕組みも不可欠です。
- 月次がいつ締まっているか
- 請求書や支払処理の進捗
- 担当者ごとに集中している業務の有無
これらを明確にしておくことで、管理体制の弱点を早期に見つけやすくなります。経営者が状況を把握できる環境を整えることで、経理部門だけに業務が集中しない組織体制を作ることができます。
システム導入と組織体制の強化を整えることで、属人化を防ぐ土台が固まります。ここまで整備した上で、さらに効果的な方法として注目されるのが、外部の専門家によるアウトソーシングです。
続く項目では、外部委託による属人化の解消メリットを整理します。
経理の外部委託で属人化を解消する選択肢
外注を検討すべき企業の状況
経理の属人化が深刻な企業では、内部改善だけでは限界を感じるケースがあります。
- 月次作業が担当者の負荷に依存して遅れる
- 経営者が数字を把握できず判断が遅れる
- 担当者が退職した際の引き継ぎに時間がかかる
こうした状況が続く場合、外部の専門家に経理業務を委託することが現実的な選択肢になります。外注は一時的な対応だけでなく、長期的に属人化を解消するためにも効果的です。
アウトソーシング導入のメリット
外部の専門家へ業務を委託することで、社内では対応しきれない課題を効率的に解消できるようになります。
特に経理業務は専門知識や正確性が求められるため、外部リソースの活用は属人化対策として大きな効果を発揮します。
- 専門家による正確な処理でミスが減る
- 業務が標準化され属人化から脱却しやすくなる
- クラウド会計や仕組みづくりも同時に整えられる
外注先は業務フローや改善ポイントを客観的に確認できるため、会社にとって最適な運用を提案しやすい点もメリットです。
どの業務を外注すると効果が高いか
企業の状況に応じて、外注する範囲を柔軟に決めることで、内部体制と外部リソースをバランスよく活用できます。
- 請求書処理や支払い管理などの定例業務
- 月次資料作成や残高確認などの専門性が必要な範囲
- クラウド会計の設定や運用サポート
このように、属人化しやすい領域から外注することで、内部の負担を効果的に減らせます。
まとめ
経理の属人化は、担当者の退職リスクやミスの増加だけでなく、経営判断の遅れにも直結する大きな課題です。業務棚卸しやマニュアル化、クラウド会計による可視化と標準化を進めることで、社内の改善は十分に可能ですが、限られた人員で全てを整備するには時間と専門性が求められます。
そこで効果的なのが、外部の専門チームを活用して経理の仕組みを整える方法です。専門家が業務フローの改善から月次資料の整備まで一貫して支援することで、企業は安定した経理体制を早期に構築できます。
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